お酒の神様

仕事が終わり、最寄り駅前のスーパーでRTD（ready to dorink缶のお酒のこと）を2つ買う。

つまみのキムチとレトルトの餃子。

これだけあれば十分だ。

帰宅し家につき、シャワーを浴びたらPCの電源を入れてYouTubeにアクセスする。

プシュ。1本目。今日は新ジャンルからはじめよう。

神様がいらっしゃる前は内容をしっかり頭に入れておきたいから、最近趣味ながらもまじめて取り組んでいる筋トレの動画を見る。

プシュ。2本目はレモンサワー。もちろん男前の９％だ。

筋トレ動画が見終わるころ、レサワも終わり、次はハイボール。

お気に入りはバーボン。

ジムビームは値段も安く、しっかりバーボンしていて気に入っている。

そろそろ神様がいらっしゃるころだ。

難しい内容の動画はもう頭に入らない。お笑いや過去のテレビ番組を見始める。

YouTubeは本当にすごい。

ドリフだってドキッ！女だらけの水泳大会だって見放題だ。

小学生のころ、親と気まずい雰囲気で見ていた、ドリフの下ネタだって、水泳大会のポロリだって今なら一人で笑って見れる。

来た、神様だ。

もう音楽しか入ってこない。音楽が脳全体を支配する。気分は最高潮だ。

神様は幸せを運んでくれる。

大好きなBABYMETALのliveに酔いしれ、涙し、そしていつのまにか眠りに落ちた。

神様の助けを借りなければ、不眠症気味の私は眠れない夜を過ごさなければならない。

神様、本当にありがとう。

乾いたのどのヒリヒリとした感覚で目が覚める。

不快感を感じながら麦茶をがぶ飲みする。

さあ、一日の始まりだ。仕事へ向かう。

今夜はなにを飲もうか。などと考えながら通勤電車に乗り込む。

こんな毎日を何年も過ごしていた。

おかしい。このところ神様がいらっしゃるまで時間がかかるようになった。

ハイボールの濃さも量もどんどん増えていく。

でも、必ず神様はいらっしゃる。幸せを運んでくれる。明日への眠りを約束してくれる。

神様ありがとう。神様は裏切らないんだ。

ザザーン波の音がする。

東京湾が一望できる日本で唯一の依存症病院に私は入院している。

定年退職を迎える前に、家族はみんな出ていった。

どうやら、神様をお迎えしているときの私に愛想がつきたようだ。

ひとりになった私は休みの日は朝から神様をお迎えするようになり、ついには仕事中でも神様に頼らなければならなくなってしまったのだ。

思うように動けなくなったからだと、震える手を見つめながら今後を考える。

明日は退院だ。

そうだ、神様に相談してみよう。