お面ライダー「ストロングゼロ文学」@ゴクおじ

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ノックの音がした~星新一トリビュート2~

こんな真昼間に誰が来たんだ?

 

ノックの音は執拗になり続ける。

俺は迷惑そうに「はいはい。」と言いながら玄関へ向かった。

玄関を開けるとベレー帽をかぶった初老の男性がいた。

「こんにちは。Nさんですね。私は宇宙人です。」

 

新手の宗教かなにかの勧誘か。

「あ、そういうのは間に合っていますので。」

俺はドアを閉めようとしたが、ベレー帽の男はドアに手をかけ閉めるのを防いできた。

「ちょっと!一方的ですね。話を聞いてください。話をしないでそのまま連れて行ってもいいんですか?」

ベレー帽の男が妙なことを言うので不信に思いしかたなく少し話を聞くことにした。

 

「あ、聞いてもらえるのですね。よかった。我々としても手荒なことはしたくなかったんですよ。」

なんなんだ?俺は拉致されるのか?

我々と言っても一人だし、こんな小柄な初老の男に俺を連れて行けるわけがないだろう。

小首をかしげる俺にベレー帽の男は続けた。

「私は宇宙人です。地球から500光年先にある惑星から来ました。我々の目的はこの星の支配と移住です。この星にきて100年。動植物や環境を調べ尽くしまして、移住にはもってこいの星だとわかったのですが、まだこの星の支配層である人間の生体調査だけは行っていなかったのです。それでですね、平均的な生体がNさん、あなたなのです。それなので、お連れすることにしました。」

どうやら男はいかれているらしい。警察を呼ぶか、それとも救急車のほうが早いか・・などと考えていると、ベレー帽の男に腕をつかまれた。

振り払おうとするが、ものすごい力でびくともしない。

「それでは立ち話もなんですので、我々の基地にお連れします。」

 

え?

 

気が付くと俺は見慣れない明るい部屋の中にいた。

テーブルをはさみ、ベレー帽の男が紅茶かなにかを飲みながらこちらを見ている。

「どうぞ、飲んでください。この時間は人間のティータイムと言うのでしょう?これは高級な紅茶ですよ。」

俺は紅茶を手に、周囲を見渡した。

見慣れない機器が並んでおり、まるで違う文明の世界にテーブルと紅茶だけがポツンと違和感丸出しで置かれている。

「そうですよね。興味あると思います。我々の星の文明は人類の遥か先を行っているのですよ。人類は光の速さを超えられないですし、まあ、光速で移動する必要なんてないんですが、そんな初歩的な移動手段も人類はお持ちではないですものね。」

ベレー帽の男に手をつかまれたと思ったら、瞬きもする間もなく俺はここにいた。

見慣れない光景。間違いない、本当の宇宙人だったんだ。

 

宇宙人は言う。

「さて、本題です。Nさんを実験体にして生体検査を行わせていただきます。我々として、今後地球をどうしていくか、最終決断の資料とさせていただきます。なに、苦しいことなんてしませんよ。まあ、帰れるかどうかはまだ決めていませんけど。」

淡々と告げる宇宙人の表情のない顔が恐ろしくなり、俺は逃げようと椅子から立ち上がろうとした。が、動けない。

「あ、今椅子に固定させてもらっています。拘束されているのが目に見えないとは思いますが、まあ、説明してもご理解いただけないでしょうし・・・えっと、逃げられませんよ。」

 

ん?ここはどこだろう?

目を覚ますと、俺は自分の部屋にいた。

さっきのは夢だったのか?

いや、手首にはさっき宇宙人にとてつもなく強い力で握られたあとがついている。

手にはなにかメモのようなものがある。

「生体検査の結果、我々は50年間地球支配に猶予を与えることにしました。そして、あなたには特別な力を与えてあります。それを使ってみてください。それでは50年後にお会いしましょう。」

 

 

50年が経った。

 

20代のままの肉体の俺は、世界の救世主と言われるようになっていた。

宇宙人と同じスペックの肉体と頭脳を与えられた俺は、思いつく限り地球を作り替えたのだ。

50年前にあった、気候問題、自然災害、戦争、公害。ありとあらゆるものを改善した。

さらに科学は実質年経過は50年だが、1000年は進歩したはずだ。

今や太陽系の宇宙旅行は当たり前になっている。

もちろん、軍事力も50年前の兵器がおもちゃに思えるくらい進歩した。

くるならこい、宇宙人ってことだ。

 

 

「さて、あの地球人、Nさんに力を与えてから50年たったな。我々の遊び相手くらいに進歩してくれただろうか。もし、つまらない進歩をしていたら人類は消してしまおう。軍事力を向上なんてさせていたら笑ってしまうな。我々の文明は人類の基準で言えば1万年先を行っているのだから・・・」